日本は滅びるのか？

米長邦雄さんから頂いた扇

先月（2000/8）のこと、雑誌の仕事で立て続けにお二人の方を取材した。
早坂氏（故田中角栄氏の秘書）と米長氏（将棋永世棋聖）だ。

伺った取材とは全く違う話題だが、期しくも、お二方共通の話題があった。

「日本は滅びる」だ。

いささか過激な話題だが、お二人とも真剣にそれを憂いていらしたのだ。

特に今年に入ってからの少年犯罪、それをきっかけにその思いは強くなったと思われる。一時は毎日のように、少年が人殺しというようなニュースばかり・・ふと、周りを見渡せば、どこの国籍のヒトだか分からないような真っ黒な女の子がうようよ・・生まれたときからケータイで遊び、そのマナーも誰からも教えられずに育ってきた小学生・・憂いというのは、このような若者があまりに多くなってしまって、そう言う人たちが大人になったとき、この国はダメになってしまうのではないかと言うことだ。

お二方ならずとも、僕でも日本はやばいんじゃないか？と本気で思っている。「日本は滅びる」という提言は何もお二人から聞いたのが始めてではないが、実際に、日本の一時代を背負ってきたお二方が、僕の目の前で、蕩々とその憂いを語られると、今まで以上のリアリティを感じずにはおれなかった。

彼らは間違いなくここまま大人になっていく。そうなった日本を想像してみて欲しい。いったい日本はどうなってしまうのか？本当にこのままで良いのか？このまま行ってしまうのか？

よくこの手の話で引き合いに出されるのが、エジプトのピラミッドに象形文字で「最近の若者はなっていない」と書いてあったという話だ。いつの時代でも若い者への批判は多い。また、僕の世代（３０代）も、確かに若かったときはそれなりの批判を浴びたと思う。そして、今、４０を目の前にして、どうしても若者に対して批判めいたことを言ってしまうのも、単に僕が年をとっただけのことなのかもしれない。批判されてきた僕たちだって、今ではちゃんと大人になっているわけだ。そう、日本は滅びるなんて心配する必要もないのかもしれない。でも、今の状況って、ちょっと違うんじゃないのかなと思う。

先日、夜遅くまで仕事だったので、帰りがけ、あるファミレスで食事をした。
女房と一緒だったのだが、禁煙席に通され、やれやれ今日も終わったと食事をしていたときだ。平日の夜１０時すぎだったので、客はまばらだ。僕たちの席の二つ隣に、あとから来たサラリーマン風のオジサンが一人で食事に来た。僕は気が付かなかったのだが、ふと、その人の大声で振り向いた。食事が来るまでの間で、席に座ったまま携帯を掛けていたのだ。最初、やれやれ、ま、しょうがないか、すぐ終わるだろうと思っていたのだが、延々と話は終わる模様はない。話の内容もマル聞こえだ。メールを送ったのだが、相手が初心者らしく、それの送り方がまずい、それを丁寧に教えてあげているという・・・急ぎの用事だったらまだしも、その程度のことを延々とファミレスの席で話すことなのか？３分ほど我慢していたが、ついに僕は切れてしまった。その人は会話の最中だったが、横から、「携帯掛けるなら席で掛けるな！外で話してこい」と大声で怒鳴ってしまった。
かなりそのおじさんは動揺していたようだが、すぐに電話を切って、謝っていた。

その人は見た目ではすでに４０過ぎ、たぶん、社会的にもそれなりのポジションだろう。話の内容からすると。

女房はそのときに言った。「あ〜いうヒトが親なんだから、子供を怒れないよね」と。

そうなのだ。すでに日本が崩壊しているのだ。これから大人になる若者だけの話ではないのだ。そして、その若者を作ってしまった、それを許してしまったのは、僕たちなのだ。

僕は子供をよく怒ることにしている。
もちろん、僕には子供は居ない。だから、他人の子供を外で至るところで事ある度に怒るようにしているのだ。たとえば、エレベータの乗り方、降りる人が居たら、それを待ってから乗る。当たり前のことが出来ない子供が多い。親が一緒に居ながらなんの注意もしないのだ。すべてはそう言うことから始まる。僕に出来ることはその子供に対してちゃんと言ってあげることしかないのだ。
ま、当然、親の居ないところだけどね。馬鹿な親にはそう言うことが有り難いことなのかどうかもわかりはしないのだから。馬鹿な親に育てられた子供は不幸だ。

さて、冒頭のお二方の話だが、お二方とも、共通の締めくくりだった。

日本はこのままではダメになる。だけど、人間も馬鹿じゃない。いよいよ滅びるその崖っぷちに立ったとき、日本人は気が付いて、このままじゃいけないと思うはずだ、そして、何とかしようとするに違いない。

果たして、その日はいつ来るのか？

どうしようもなく時代に流されて、このまま滅びの道を一直線に行かないことを祈るのみだ。